風景文の中でも水辺の景色をとらえて意匠としたものには、川や浜の砂州を中心とした「州浜文(すはまもん)」、州浜や貝、波、千鳥などで海岸風景を表した「海賦文(かいふもん)」、浜辺の松を表した「浜松文(はままつもん)」などがあります。
海賦文には連続する波の合間に魚や亀が浮かんでいる意匠もありますが、きものにはあまり使われません。
風景文様全般に言えることですが、一見すると単に景色を写しているようでも、隠れテーマとして故事来歴、謡曲や物語の一節を秘めていることも多く、それを読み解くのもきものの楽しみの一つと言えます。
【葦刈】 あしかり
葦に苫屋、波に漂う苫舟と潮汲み桶の侘しい浜辺の情景を型染めしています。
左上には女性ものの笠があり、葦売りに身を落とした夫をはるばる妻が訪ねてくるという、能の「葦刈」を背景にしたものだと言われています。
【雲取りに水辺】 くもどりにみずべ
絞り染めしたように雲を表し、水辺の風景と枝折り戸のある風景を刺繍で表現した文様。
江戸時代の武家女性の小袖の意匠を元にデザインされた、気品あふれる文様です。
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